外壁塗装の価格の相場
業者によって値段がバラバラな外壁塗装。
見積もりを取っても果たしてその工事が安いのか高いのか素人にはまったくわかりません。
何社か複数の業者から見積もりを取っても、業者それぞれ価格が違うだけで、工事内容の優劣もわからない。
外壁塗装を計画する人は、よくこのような問題にぶつかります。
あらかじめ外壁塗装の相場を知ることって出来ないのでしょうか?
例えばネット上でも見る、ウレタン塗装80万円、シリコン塗装90万円、フッ素塗料100万円などのような価格相場をです。
でも残念ながら千差万別に状況が変わる家の場合、このような表示はあいまいすぎて、外壁塗装の相場とは言えません。
また、結論を先に言うのならば、実は相場というものは存在しません。
なぜなら外壁塗装はとても相場を表しにくい工事だからです。
根拠がない強引な価格相場
家はそれぞれ築年数も違えば、傷み具合も違うしそれこそ千差万別。
相場自体を出すことはほぼ不可能に近いと言えます。
なぜでしょうか?
まず相場には一般に塗料の種類別で、費用が分かれているものがあります。
先ほどのウレタン塗装○○円やシリコン塗装○○円などですね。
でもそれは塗装種類のみによる価格差の違いだけに過ぎません。
分かりやすく言えば外壁塗装の工事費用は『塗料代』+『作業費』の構成になります。
よく見る相場ではすでに、『作業費』が家の状況に関係なく一定に固定されていて、後は塗料の違いだけでの価格表示になっています。
分かりやすく相場の例を出してみます。
建坪30坪の家
1.ウレタン塗装80万円=『作業費70万円+ウレタン塗料10万円』
2.シリコン塗装85万円=『作業費70万円+シリコン塗料15万円』
繰り返しますが、家は千差万別です。
この例では建坪30坪となっていますが、大きさだけで「作業費」を決めるのは強引すぎます。
塗料種類の違いによる価格差は当然でだとしても、あらかじめ「作業費」が固定して計算されているこの例はあまり意味ありません。
外壁塗装は他のリフォームと違って、工事の大部分が「塗料」ではなく「作業費」で占められるからです。
家それぞれで「作業費」はとても大きい値幅で上下をするものなのです。
同じ大きさでも築年数や状況が違えば、作業費・・いわば作業量が同じという仕事はまずあり得ません。
これでは見積もりで出た実際の数字とはだいぶかけ離れてしまい、もはや相場と言えるものではなくなってしまいます。
塗料だけの違い、ホントはたった数万円
外壁塗装の価格には、塗料代よりも作業費が大きく占めているということをお伝えしました。
ですので、高い塗料で塗った時よりも安い塗料で塗った方が、作業費次第では工事費用が高くなる場合もあります。
またその逆に、安い塗料で塗った場合よりも高い塗料で塗った方が安くなる場合もあります。
※形も大きさも同じと仮定
Aという家は高いシリコン塗料を使用。作業量が断然少ない。
Bという家は安いウレタン塗料を使用。作業量が断然多い。
もう作業量を無視してまでの価格は当てにならないということは理解できたと思います。
塗料だけを見てしまうとAの価格が高いです。
でも実際には作業量が断然多いBのほうが、価格は断然に高くなります。
塗料の違いによる価格差というのは本当はわずかなものです。
通常良く使われるウレタン塗料とシリコン塗料の違いでも、違って1缶数千円程度。
家1軒分でも3万円も変われば大きいほうです。
それ以上変わるのは塗料代の違いというよりも業者の都合です。
断熱塗装やフッ素系はまだまだ一般的と言えませんので、ここでは割愛します。
さらに言えばAが100万円の工事で、Bが150万ほどの価格になる工事というのはいくらでもあります。
要するに同じ大きさの家同士でも作業量が1.5倍ほど違うということです。
手抜き工事と価格の帳尻を合わせ
そして悪質な工事は、いくら高く良い塗料を使っていたとしても、現場で職人さんが肝心な作業量を調節していたのでは、まったく意味のない工事となります。
いわゆる手抜き工事です。
単価もあやふやで定価もない外壁塗装です。
今は原価割れするほどの価格が業界内で浸透している中、どの業者もまともな価格での見積もり提出は妥当ではないという風潮もあります。
安ければいいというお客さんだけではないですが、高いより安いほうがいいというのは世の常です。
安かろう悪かろうという言葉は知っていても、実際には安いものに惹かれてしまものは致し方ないものがありますよね。
特に最近のホームページでの派手な価格表示には目が移るでしょう。
ただどんな理屈や理由があろうとも、外壁塗装に安くて良い工事というものは業者が赤字を承知で工事しなければ存在しないぐらいのものと思ったほうがいいです。
原価割れということはそういうことです。
見積書だけで工事の質を判断することはできませんが、数社から見積もりを取って極端に安い見積もりがあれば、それは帳尻合わせのために作業量の調節をする施工と思ってまず間違いありません。
また見積書に塗り回数などの数字が出ていたとしても、それはあくまでも数字だけの話。
肝心なのは数字よりも仕事の中身がうすいか濃いかの入念さです。
その入念さは職人側の諸事情で決まります。
会社側から職人への待遇、職人のプライド・技術、下請けならその請負金額などです。
ほかのリフォームなどのものづくりは、形があるのでまだ完成品で判断できますが、外壁塗装の場合は形がないので見た目だけの判断に頼るしかありません。
作業量を調節させて利益を保つやり方は、見た目でしか質が判断できない外壁塗装のなせる業ですね。
価格相場というものは、よほど塗装に精通した専門家でないと表示もできません。
家それぞれの状況次第なので、とても詳細にな表す必要があります。
結局お客さんが知りたいのは、もっとアバウトでもいいのでざっくりとした相場なのですが、それが困難な以上、それこそ見積もりをしたほうが早くなってしまうのです。
価格の差って具体的に家の何が違う?
では、千差万別といっても具体的には家のどの辺に違いが出てくるのでしょうか。
①築年数
築年数が変われば、作業量も大きく変わる要因となります。
築年数が経過した家は、窓枠やひさしなど外観に多く木部と鉄部が使われているため、その素材の種類分だけ多く塗装をすることになります。
逆に比較的新しい家は、アルミサッシなので、木部や鉄部のように塗装をする必要がありません。
また築年数が古ければ、それだけ傷み度が大きく、クラックなど劣化場所への修復手間もかかってきます。
劣化を通り越し腐食してしまうと、塗装だけでは立ちいかなくなり、大工による補修も必要になってきます。
②外壁種類
最近の代表的な戸建住宅に限れば、モルタルとサイディング、ALCとの3つほどに分かれますが、それぞれ外壁模様の凹凸の違いなどで、塗り手間が大きく変わってきます。
外壁を見ないうちの㎡単価は業者側としては、通常怖くて出すことはできません。
それほど実際の現場とは大きくかけ離れてしまうことも少なくないのです。
モルタル
モルタルは模様の凹凸と粗さの違いで、職人の塗り手間が3倍ほど変わる例もあります。
ツルツルと凹凸が少ない「ボンタイル」は塗料消費量も少なく済む分塗るのも容易な作業といえます。
逆に凹凸で目が粗い「リシン」、「スタッコ」などの模様の外壁はボンタイルに比べて、塗料も作業量も3倍かかることもあります。
サイディング
シーリングの打ち直し交換の有無によって、20万円前後変わってきます。
ALC
パネル形式のため、モルタルより壁模様の凹凸の差もなく、建物自体が平面的で入り組んでいないため養生も少なく、どちらかといえば作業量が少ないです。
ただサイディングと同様、シーリングの打ち直しが必要になってくる場合や、意匠パネルといってデザイン性に優れた、タイル調やレンガ調などの凹凸があるものは、ローラーで塗る部分よりも、刷毛塗りなどがメインになるため、その分作業量が増します。
以上、外壁にはモルタル、サイディング、ALCなど様々なものがあります。
モルタルやサイディング、ALCはローラーで塗装できますが、ここでは取り上げていませんが、トタンや羽目板は刷毛で塗る部分が多く手間もかかります。
この動画でも詳しく見れます。
③付帯部の塗装
築年数に関係なく破風板や軒裏がシンプルな作りの家がある一方で、幅の広い軒裏、雨樋が邪魔をして塗りにくい破風板などは手間が掛り作業量が増します。
日の当たりが強く、塗膜がはがれてしまうほど傷みのひどいものも塗り回数が増えます。
波板状の雨戸はスプレーによる吹き付け塗装も可能ですが、塗料飛散の危険性があるときは刷毛仕上げになり手間が掛ります。
工事費用の内訳
工事費用は大きく3つあります。
1.足場代
2. 塗料代
3.人件費(作業)
大まかな工事費用はこの3つです。
他にローラーや養生などの道具や材料がありますが、全体的に見ればごくわずかです。
①足場代
どの業者さんも大きな差はありません。
足場代は見積書の中でも単純明快で、業者同士の見積もり項目でも比較しやすいため、意図的に金額を安く設定する業者さんも存在します。
ただそれだとほかの塗装作業にしわ寄せが行ってしまうという見方もあるため、正確な数字が望ましいのは言うまでもありません。
足場には大きく分けて「単管足場」や「くさび足場」の2種類があります。
単管足場は塗装作業に危険がともない、職人に敬遠されるため、作業効率が良くない足場です。
塗装の質にも良い影響を与えません。
くさび足場は、材料を置いたまま両手手放しで作業できる、がっちり固定されているため揺れずに落下の危険性もほとんどなく塗装に適した足場です。
見積もり時には足場の種類にも気を配りましょう。
②塗料代
塗料はアクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、断熱、光触媒など色々あります。
最近はフッ素とシリコンの間に、ラジカル制御形ハイブリット塗料という最新塗料も発売されています。
フッ素や断熱、光触媒などの特殊高級塗料を除けば、それらの価格差は、違っていていも1缶数千円の違いなので、家1軒分でも合計費用からすればわずかなのです。
フッ素、断熱、光触媒は高額のため、まだ一般的ではありません。
今はウレタンでの工事も少なくなってきましたが、アクリル塗料での工事はほとんど見かけなくなったので塗装計画から外してもいいでしょう。
③人件費
外壁塗装で費用的に一番大きく占められる部分です。
繰り返しますが、業者によって大きく変動するのはこの「作業量」、すなわち人件費です。
屋根葺き替えやサイディング貼り工事など他のリフォーム工事は、人件費よりも製品となる材料が主になることがほとんどです。
でも塗装の場合、材料は塗料でその費用も合計額からしたらわずかのため、作業量の元になる人件費がいかに工事の質を左右させることが重要なのが分かると思います。
まとめ
作業量が少ない外壁塗装
・家建物自体が単純な形状で、塗装も養生もスッキリと簡単。
・ひさしなどの突出部材が少ない。
・刷毛で塗る部分が少なく、外壁の大部分がローラーで塗れる。
・木部と鉄部が少なく塗装の必要のないアルミサッシが多い。
・外壁はほぼ平面で塗りやすい上に、塗料消費量も少なく済んでしまう。
作業量が多くなる外壁塗装
・家建物自体が入り組んだ作りで、塗装も養生も細く複雑な家。
・ひさしなどの突出部材が多い。
・塗装が必要な木部と鉄部が多い。(木部、鉄部は外壁とはちがう塗料のほか道具の使い分けや、色も異なるため塗り分けが必要)
・刷毛で塗る部分が多い。
・外壁は凹凸模様のため、塗料消費量と塗り手間の増大。
・枚数が多く、大きい波板状の雨戸。
全く同じ面積の家でも、職人にとっては同じ家ではありません。
さらに外壁がサイディングなどでは、シーリング工事も加わってきます。
それぞれの家の違いで、作業の内容も量も違うことで、価格も千差万別ということを知っておくとよいかと思います。